序章 ~2002 東京

  • 序章

    「人生、山あり谷あり。人生がうまくいっている時は、決して調子に乗らず、次に来るスランプに備え、しっかり蓄えをしておく。人生がどん底な時は、その状況を冷静に受け止め、やがて訪れる上向きになる時を静かに待つ。」誰もがわかっていることかもしれないけれど、それが僕が今までの人生の中で学んだことだ。 自分の人生を大きく変えたのは、紛れもなく2001年夏の病気だった。 「あの病気がなければ、-自分は今どこ...

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  • 1. 大きな誤算

    2001年当時、僕は大学卒業3年目、国際弁護士を夢見て司法試験の勉強に励んでいた。 大学時代にふとしたきっかけで、司法試験の勉強を開始した。当時の僕は「自分に不可能なことはない!」と思うくらい、すべてが順風満帆で、相当うぬぼれているところがあった。司法試験は、日本最高峰の国家試験。自分のすごさを他人に知らしめるためにも、司法試験は絶好の挑戦だった。 2回目(1999年)の受験...

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  • 2. 家族の存在意義

    手術の1週間後、母とともに病理検査の結果を聞いた。病名は「Desmoid」という非常に珍しい腫瘍で、癌とは異なり転移はしないが、同じ箇所に再発する可能性が比較的高い半良性・半悪性の腫瘍であった。結果が出たその日の夕方、母は病院を去る際にエレベーターホールで僕の手をさすりながら、涙を流してこう言ったのを今でも覚えている。「癌じゃなくてよかった。私があなたの病気を代わってあげたかったわよ。」(その8...

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  • 3. 散らばったジグソーパズル

    僕の当時の状況は、自分一人の力ではどうにもならない状況であった。精神科に行く息子を持ってしまった両親を哀れに感じたが、自分が自殺するよりはましだと思い、思い切って両親に精神科に行きたいことを話した。 母親には腫瘍摘出のために入院していた病院の精神科に予約を取ってもらい、診察にも付き添ってもらった。 精神安定剤と睡眠薬を処方してもらい、薬に頼る生活が始まった。 当時、仲の良いいくつかのグルー...

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  • 4. 希望の光

    2002年1月中旬、ニューヨークから戻ってきた後就職活動を始めたが、当時はまさに就職氷河期真っ只中。全く興味のない会社の法務部等に応募してみたものの、それでも内定などもらえなかった。  1月下旬のある日、友人と居酒屋で食事をしていると、隣から直近の司法試験に合格をした二人の会話が聞こえてきた。司法試験をあきらめたものの、彼らの会話を耳にして僕は改めて気づいた。「このままどこかに就...

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